このカバレージはBIGMAGICの番組にて「カバレージライター募集」が行われた際に応募したものです。

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 戦いの舞台は「The Replay」。
 BIGMAGICの番組内で行われる対戦企画だ。賞金や名誉とは無縁だが、対戦者のリュウジと岩SHOWの表情に緩みはない。
 フォーマットはレガシー。ただし、スタンダードやモダンから流用したデッキを使用するというコンセプトだ。高額カードを買えないプレイヤーにもレガシーの楽しさを知ってもらいたいという番組側の想いが感じられる。
 二人はいかなるデッキと戦いを披露してくれるのか。

 GAME1

 先手のリュウジが電光石火の立ち上がりを見せる。『実験体』から『炎樹族の使者』二体&『稲妻のやっかいもの』と息つく間もなく生物を連続展開、二ターン目にして7点アタックを繰り出す。
 対する岩SHOWは「カンベンしてくれ」とばかりに『実験体』へ『剣を鋤に』。最速スタートは阻害できた。が、6点クロックは依然として脅威だ。ターンが返ってくると、スピリット呪文を唱えるたび「エンチャント(クリーチャー)」をサーチできる『脂火玉』をプレイ。マイナーカードの登場で、オーラを軸にしたスピリットデッキであることが明らかになった。
 リュウジはブロッカーを気にせずフルアタック。岩SHOWは『脂火玉』で『やっかいもの』を受け止める。『ゴーア族の暴行者』を「勇血」されれば窮地に追いやられる場面だが、持たれていれば負けと割り切ったのか、ノーケアだったのか。いずれにせよ「勇血」はなく、『やっかいもの』が一方的に討ち取られて4点ダメージ。岩SHOWのライフは早くも12となった。このまま押し切りたいリュウジ、だが後続が展開できない。
 岩Showとしては二の矢が飛んでこなかったことで一気に楽になった。『涙の神』『迷宮の霊魂』と立て続けに唱え、『脂火玉』の能力で『信仰の足枷』『不忠の糸』をサーチ。ブロッカーを立てつつ相手の生物を奪って封殺を狙う構えだ。
 リュウジは引いてきた『ケルドの匪賊』で攻め手を増やすも、『炎樹族』二体ではさすがに殴れずターンエンド。
 岩Showは『奥義の翼』を『脂火玉』に貼って初アタック。「オーラ交換」の五文字が見るからに怪しい。とはいえマナが足りず起動は次のターンから。
 追い詰められた感のあるリュウジ。「オーラ交換」が不気味だが攻めるしかない。しかし『炎樹族』Aは『霊魂』でブロック、Bへは『剣を鋤に』と捌かれてはさすがに厳しい。これは勝負あったか。
 テイクターン。岩Showは『脂火玉』で殴り、おもむろに「オーラ交換」を起動。『奥義の翼』と入れ替わりに貼られたのは、なんと+10/+10修正&トランプル&滅殺2を与える『エルドラージの徴兵』! あえなく投了となった。

 カードプールが広い分、レガシーには凶悪コンボがひしめいている。それらは時として理不尽ではあるものの、スタンダードでは味わえないスリリングなゲームをもたらしてくれる。

 GAME2

 負け先のリュウジが『教区の勇者』二体を並べるスタート。一見大人しい立ち上がりだが、今後『ナカティル』『ゴーア族』以外の自軍生物が出るたび『勇者』が膨れ上がるのだから油断はできない。
 対する岩Showは『イアロスの英雄』で勇者を迎え撃つ。が、これにはターンエンドにあっさりと『稲妻』。
 リュウジは『ケルドの匪賊』をキャスト。荒くれ者の加勢でパンプした『勇者』たちで襲い掛かる。これで岩Showのライフは早くも11。しかも相手は8点クロックを有している。「やはり最後の敵は同じ人間だったか」とは誰の台詞だったか。
 絶体絶命の岩Show。『迷宮の霊魂』を出して一縷の望みを繋ごうとするも、リュウジは『やっかいもの』をプレイしてフルアタックを慣行。追加で「勇血」した『ゴーア族』がきっちりライフを削りきった。
 ここまでたったの四ターン。まさに瞬殺。これぞビートダウン。電撃(ブリッツ)の名は伊達ではない。

 過去の「The Replay」を通じて感じるのはリュウジのプレイングの速さだ。彼はネットで常々スロープレイヤーに苦言を呈している。曰く「マジックは時間を掛けてベストを見つけるゲームではなく、限られた時間でベターを探すゲーム」である、と。「マジックは思考の瞬発力を競うゲーム」という表現も見かけた。これらには同感で、対戦中つい考えこんでしまいがちな筆者はこの言葉を肝に銘じている(むろん、限られた時間でベストを見つけられるに越したことはないが)。

 GAME3

 第三ゲーム。泣いても笑ってもこれが最後だ。勝利を手にするのは『稲妻』の速さで襲い掛かる人間(ヒューマン)を駆るリュウジか、あるいは多彩な『奥義』を纏う精霊(スピリット)を操る岩Showか。

 初の先手となる岩Show。戦いの火ぶたを切ったのはこれまで姿を見せなかった『ルーンの母』。続いて『脂火玉』と理想的な滑り出しを見せる。
 一方リュウジは『ナカティル』スタート。このアタックに、岩Showはどちらかの生物でブロック後『母』の能力を起動する手もあったが、スタック除去を警戒して当然のスルー。戦闘後リュウジは『炎樹族』『火拳の打撃者』と並べ、岩Showは『迷宮の霊魂』で『不忠の糸』サーチしてターンエンド。睨み合いの盤面だが、『母』『不忠の糸』がある分、岩Showが有利か。
 リュウジが『アヴァブルックの町長』を召喚する。すべての人間に+1/+1修正を加える良カードだ。『ナカティル』と人間二体で攻撃。『打撃者』の能力で『霊魂』をブロック不能にさせ一気に9点を狙うも、これには岩Showが攻撃指定前に『打撃者』へ『剣を鋤に』。『霊魂』と『炎樹族』が相打ちで岩Showのライフは残り13。戦闘後リュウジは『渋面の溶岩使い』を加えてプレッシャーを掛ける。『母』の能力を牽制すると同時に、本体ダメージでの勝ち筋も見えてきた。
 だが岩Showも黙ってはいない。ひとまず『不忠の糸』で『町長』を奪ってターンを渡すと、単騎駆けの『ナカティル』を『町長』でブロック後、少考を経て『母』の能力で『町長』を守った。場には召喚酔いの解けた『溶岩使い』がいる。ここであえて『母』を見捨てた真意や如何に?
 このアクションに対してリュウジはいささか迷う様子を見せたのち、『脂火玉』へ『流刑への道』。続け様に『母』を『溶岩使い』で焼いて相手の場をほぼ更地にする。
 重要な生物を二体も失った岩Show。だが一連の流れは彼の思惑通りだった。
 ターンが返ってくるとすかさずフェッチランドをセット&即起動。六マナフルタップから飛び出したのは、対ビートダウンへの切り札『天界のマントル』! どうやら前ターンのプレイングの狙いは、『流刑への道』を釣り出しての土地伸ばしだったようだ。これぞファインプレイ!
 とはいえ、リュウジが『流刑』を持っていない可能性もゼロではなかった。リスキーといえばリスキーなプレイ。しかし、勝利を得るためには、時として己の読みに殉じる覚悟を持たねばならない。
 そして、ハイリスクを乗り越えた先には、ハイリターンが待っている。
 かくして反撃が開始された。
 タップ状態の『ナカティル』『溶岩使い』を尻目にレッドゾーンに進む『アヴァブルックの町長』。ブロッカーのいないリュウジは臍を噛んで通すしかない。
 ライフ21のリュウジにとって4点などかすり傷。だが、相手ライフが12から倍増するのはあまりに痛い。痛すぎる。
 それでも諦めるわけにはいかないリュウジ。ターンが返ってくると、フルアタック後に『ケルドの匪賊』『火拳の打撃者』と並べ『町長』への防御態勢を築く。
 岩Showからすれば、『町長』に『奥義の翼』等の回避能力付与オーラを張れば勝ちの状況。このまま勢いに乗って押し切ってしまうのか。
 ドローする岩Show。
 そのまま静かにターンを終える。
 両プレイヤーが呪文を唱えなかったことにより、リュウジのアップキープに『町長』が『頭目』変身。サイズアップに加え、自ターンの終了時に実質2/2の狼トークンが出るようになった。
 敗北を回避したリュウジ。グッと身を乗り出して気合いを入れてから、『溶岩使い』を除く三体で攻撃する。『打撃者』の能力でブロックを許さず相手ライフを11に落とすと、二体目の『溶岩使い』を追加して守りを固めた。とにかく『頭目』さえ通さなければ何とかなりそうだ。
 岩Showのターン。『頭目』アタック。『溶岩使い』ブロック。『迷宮の霊魂』プレイ。エンドステップに狼トークン生成。『溶岩使い』で本体に2点。リュウジのターン。『匪賊』消失。ドローゴー。生物以外の何を引いたのか。エンド前に岩SHOWが『修復の天使』キャスト。『修復』と『頭目』でアタック。『打撃者』でブロック。リュウジのライフは14。勝負は接戦の様相を呈してきた。
 とはいえ、長期戦になると真価を発揮するのが『渋面の溶岩使い』。岩Showのエンド時にまた本体に2点で、岩SHOWのライフはついに危険域の6。そしてリュウジの墓地は一枚。岩Showからすれば皮一枚で首が繋がっているも同然だ。果たして反撃は間に合うのか。
 戦いの趨勢を左右するリュウジのドロー。
 ぱたり、と置かれたのは土地。
 岩Showのドロー。
 引いてきたのはフェッチランド。プレイして即起動。8マナフルタップで最後の手札を唱える。『修復の天使』を対象にキャストされたそれは、最終兵器の『エルドラージの徴兵』! フルアタックで勝負あり!
 かと思いきや、そこでリュウジが間髪入れず本体に『稲妻』。そしてその『稲妻』を含めた墓地二枚をリムーブして『溶岩使い』を起動しゲームセット!
 なんという劇的な幕切れ。岩SHOWの最終ドローがフェッチランド以外の土地なら勝敗は逆だった。This is a the Magic: The Gathering!

 かくして「The Replay」はリュウジの勝利で終わった。放送にふさわしい熱戦を繰り広げた対戦者二人に惜しみない賞賛を送りたい。

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